佐藤くんは甘くない
私は、震える手で、掴みかかった佐藤くんの手を掴んだ。
「これ以外に、方法は、ないから。私と瀬尾が隣にいられる方法は───」
「───違う!あんたはただ逃げてるだけだ!!言うのも、言われるのも怖いからただ逃げていろんなものから目を背けて知らないふりしてるだけなんだよ!」
笑えるくらいに、正論だった。
佐藤くんの言うことは正しい。
間違っているのは、私のほう。
でも、私は道を踏み間違えてしまった。もう後戻りはできない。
あとは、悪役になるだけだった。
「知らないままが、幸せなんだよ」
そう、言った途端。
佐藤くんが───息を呑んだ。そして、手首を掴み取ると叫んだ。
「なら、言ってみろ!」
「……っっ、」
「お前なんか大っ嫌いだって、話もしたくないし声も聴きたくないって言ってみろ!」
「や、めて」
「やっぱりあんたは臆病だ、しかも卑怯者なんだよ!」
「うるさい、うるさいうるさい……!!」
「好きなくせに、瀬尾のことが好きなのに言えないでいる!ずっと隠したまま、瀬尾を苦しめ続けて、それでも変わらないことを願がってる」
「やめて、やめてっ」
「無理なんだよ、変わらないままなんて絶対に!」
「やめてッ!!」
「言えよ、大っ嫌いだってあいつに言え!!」
「───やめて!!」