佐藤くんは甘くない
隣に座る佐藤くんの顔を見るまでもなく、突き刺すようなオーラに私はびくびく肩を震わせる。ほんとにすいません。
すると、赤くなった私の頬に絆創膏を貼り終わった瀬尾が、
「まあまあ先生、とりあえず今は教室戻って事情説明するのが先でしょ」
「……」
何か言いたげに先生が私たちの方を見る。そして、一瞬口を開いた。でももう怒りも通り過ぎてしまったのか、次に出てきた言葉は案外物腰柔らかい口調だった。
「この件はっ、とりあえず俺が掛け合って騒ぎ立てないようにしてやるからせいぜい反省文で書く文章でも頭の中で並べとけ馬鹿ども」
「はーい」
片手をあげて返事をすると先生がへっと吐き捨てるようにそういって、瀬尾とともに保健室を後にした。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、静まり返る。
なんとなく、気まずくて私は隣に座る佐藤くんの肩をちょんちょんとつつく。
「……あ、の佐藤くん」
「なに」
「……けがの方は、」
「馬鹿力」
「……」
ふんっと、佐藤くんが私から顔をそむける。絶対怒ってるこれ。