佐藤くんは甘くない



佐藤くんが顔を上げた。


柔らかで、優しい、心が温かくなるような無邪気な笑みで。









「───俺、告白する。文化祭が終わったら、朝比奈さんに」









たぶん、目の前が真っ暗になるってこんな感じなんだと、思った。

頭がくらりとして、息ができなくなりそうなほど、胸が苦しくなる。心の奥で嫌だ、って気持ちが膨れ上がりそうになるのを、何度も打ち消す。頭を真っ白にする。




苦しくても、それでも私は口元を上げた。


せめて、今自分のできる精一杯の笑顔で迎えてあげたかった。



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