佐藤くんは甘くない
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真っ暗な視界の中、ただざわざわと騒ぐ声が響く。
まっすぐ正面を見つめると、体育館の後ろの方から、黄色い小さな光がぽつっと光っているのが見えた。
オープニングの合図だ。
私がすうっと、息を吸うと同時に、舞台上の照明がつく。一瞬、眩しくて目を細める。スポットライトがガンガン自分に向かってくる。
はちきれんばかりの声援と、拍手の音。
私はぎゅっと、マイクを握って、叫んだ。
「皆様お待たせしましたぁああああっ!
文化祭開幕でぇええええええっす!!」
きいいいいんっとスピーカーを通して、ハウリングの音が響く。爆発するように、盛り上がりが最高潮に達っする。いろんな声がぐわっと私の体を揺さぶった。
さっきまで取り巻いていた緊張と不安が、期待と奮い立つような熱気に包みこまれていく。
「どうも、司会進行役をさせていただきます。2年の結城こはるです!」
手順通り挨拶をして、頭を下げると後ろの方からよっ補佐役ーっと掛け声が入る。うるせえ。誰だ後で殴ってやる。
「まず、オープニング最初の華を飾るのは、吹奏楽部です!!どうぞー!!」
私に向けられていたスポットライトが消えていく。私はそれと同時に舞台裏へ。振り返ると、閉じられていた幕が上がって、吹奏楽の盛大な演奏が始まる。