佐藤くんは甘くない
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「───疲れた」
大きく、盛大にため息をつく。
隣にいる恭ちゃんが疲れんの早すぎ、と苦笑する。
文化祭当日。
何とか、オープニングを成功させて、体育館から生徒が退場するのを見送った後、私たちはすぐ収集された。そして細かい指示を受けて、各自解散。
……分かってはいたけれど、本当に実行委員は忙しい。
私と恭ちゃんは、文化祭で起こったトラブルや落し物を探索する係に当てがわれ、人ごみの多い校舎をぐるぐる何周も回っている途中だった。
「完全なる飯テロだよこれ」
道行く教室で、美味しそうな匂いが漂うたびふらっと入って行きそうになる。そのたびに、恭ちゃんに首根っこ掴まれるんだけど。
ああっ、クレープの匂いがする……!
甘い匂いにつられて、通り過ぎていく教室を直視していると、隣の恭ちゃんが私の首をもってぐいっと前を向かせてくる。
呆れた顔で、恭ちゃんが、
「はいはい我慢我慢」
「……くうっ、なんで実行委員なんてやってるんだろ」
「……もとはと言えば自分のせいだろ。首絞めてんぞそのセリフ」
「あの時、恭ちゃんを推薦したりしなかったら……っ、過去の恭ちゃんに謝りたい」
「うん、まず今の恭ちゃんに謝れ」
くだらないことを言い合っているうち、いきなり恭ちゃんが立ち止まったかと思うと、あ、と声を漏らして手元の腕時計を見た。