佐藤くんは甘くない


……なんだろ。

気になって、恭ちゃんを見上げると、


「───やっべ、忘れてた!」

「は?……って、う、わっ」


唐突に声を張り上げたかと思ったら、いきなり手を引かれる。

なんだなんだ?

人ごみを避けて、走り始める恭ちゃんの後を慌ててついていく。


「ちょ、恭ちゃん?」

「俺たちのクラスっ、準備が1時半からだった!」

「……あ」


……完全に忘れてた。

通り過ぎていく教室を凝視して、時計を見る。もうすでに時刻は1時50分……うわあ、大遅刻だ。

何とか猛ダッシュで走って、教室につくと、仁王立ちした女子たちが周りを囲んでいた。私たちではなく、佐藤くんを。


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