佐藤くんは甘くない


「……佐藤くん」


後ろを振り返って、視線を投げかける。

きっと、佐藤くんは私が言わんとしていることを察したのだろう、顔を真っ赤にして視線を逸らしやがった。


ちょっ、今度こそチャンスだよ!

前回は失敗したけど、今回こそは成功させようよ!!


「佐藤くん」

「……う」

制服の裾を掴んでいた佐藤くんの手に、自分の手を重ねて離すように促す。すると、佐藤くんはしぶしぶ離して隠れていた背中から出てくる。

女子たちの視線を一身に浴びる中、佐藤くんが顔を伏せたままぎゅっと手を握りしめて、つぶやく。


「……あ、」


ごくり、みんなの生唾を飲む音が聞こえる。


「朝……、」


おお……!!

あと、あとちょっとだよ佐藤くん!あとはひなだけ……!

自然と固く握った手に汗が滲む。そして、佐藤くんは耳まで真っ赤にした顔をばっと、あげると言った。




「───朝からあんまり話してない結城でいい!!」




案の定、私は佐藤くんの頭をチョップした。





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