佐藤くんは甘くない
その声音から、次の言葉が容易に想像できた。
自然と手に持ったスマホに力がこもる。
『……あの、忙しかったら、ごめん。
結城に一番に伝えておきたくて、電話したんだ』
だんだん、気持ちが遠のいていく。
聞きたくないはずのそのセリフは、なぜかこんな雨の中ですら鮮明に聞こえてしまう。
『告白、……ちゃんと、できたよ。結城の、おかげ』
そっか、よかった。
佐藤くん、やればできるじゃん。
もっと、心の底から喜びたいのに、何かかがつっかえて私の邪魔をしてくる。
『───朝比奈さんも、俺が、好きだって……言ってくれたよ』
私は、いつの間にか通話ボタンを切ってしまっていたらしい。ぶらりと腕の力を抜く。私は浅くなる呼吸のせいか、息が苦しくて、今にもはちきれてしまいそうだった。
降り注ぐ雨は、なぜだかしょっぱくて。