佐藤くんは甘くない
次ぐ日、私は体調を崩し、朝から38度以上の熱を出してしまった。
朝起きてすぐ、ひまりちゃんにそのことがばれ、保健室の先生を呼ばれ、熱を測られ、高熱だと知るや否や、ひまりちゃんは私が部屋から出ないように見張り役を名乗り出た。その時のひまりちゃんったら、怖いのなんの。
起き上がろうとする私を鬼のような笑顔で止めるものだから、私が折れることになったのだった。
両親にも電話をして、迎えが来るのはどうやらお昼すぎになってかららしい。
せっかくの修学旅行なのに、二人の邪魔をするのは嫌だと申し出たが、あっさり却下。私が両親に無事届けられてから、だそうだ。
私はまだ温かい布団の中にくるまりながら、息苦しさに寝返りを打つ。
「……へっくしゅ……!」
ずび、と鼻を啜りながら確か手元にあったはずのティッシュを手探りで探る。……あれ、ない。ない。
「馬鹿、修学旅行で風邪ひいて寝込む奴があるかよ」
上から声が降りかかってくる。
この軽口は、見上げるまでもなく恭ちゃんの声だった。むくりと起き上がろうとした私の肩を問答無用で掴むと、そのまま仰向けに寝かされてしまった。
ぽんと、優しく布団越しに私のお腹あたりを叩く心地よさに、うとうとし始めていると、
「俺、スポーツ飲料 買ってくるから」
と、恭ちゃんが立ち上がるのが分かった。
少しだけ、寂しい。
風邪のときは、いつだって心細いものだからだ。
私は視界がぼやける程度に薄く目を開きながら、天井の木目をぼうっと見上げる。時折木目がぐにゃぐにゃ動くのは、きっと熱のせい。
はあ、と息を吐く。