佐藤くんは甘くない



こんなにも一気に熱が上がってしまったのは、きっと昨日タオルで拭いたとはいえ、気持ちを落ち着かせるために11月の寒空の中、星を見上げていたせいと、その濡れた髪のまま寝てしまったからだろう。


嫌だなぁ……こんな弱いところは、誰にも見せなくないのに。

そう思いながら、私は布団に顔を埋める。


分かりきっていたことじゃないか。

それに、私にとっても都合のいいことだ。


分かってる、分かってる、分かってる。


なのに、いざ自分の目の前に突き付けられたとき、私はどうしようもなく足踏みして立ち止まらずにはいられなくなる。その先を進むには、あまりにも自分の心が弱すぎて。


……佐藤くんが、勘違いするというが、私に都合のいいことだと、分かってる。


そうすれば、私は自然に佐藤くんに接することができるし、何より私の気持ちに気付かれないということが、私にとって好都合なのも。

分かってる。



分かってるんだけどなぁ。

なんでなんだろうなぁ。

どうして、こんなにも苦しいんだろうなぁ。



今の今まで、私はずっと友達でい続けた。佐藤くんとひまりちゃんの仲を異常なまでに取り計らったのは、そうして私の入る隙間なんて与えないくらいに二人が繋がれれば、私の気持ちにも整理がつくんだと、そんな身勝手な思いがあったから。


でも、それで私も表面上は彼らを応援する友人、なんてポジションでいられた。い続けられた。


私は佐藤くんの求めている結城を、演じ続けることができた。



< 739 / 776 >

この作品をシェア

pagetop