佐藤くんは甘くない
というわけで、私たちは授業が終わった後、出店で何をするかの討論会をすることになった。ひまりちゃんも今日は暇だったらしいので、4人で机を囲んでの討論会だ。
「じゃあ、とりあえず思いつく冬に食べたい食べ物上げてこう」
「おでん!」
「ゆたんぽ?」
「朝比奈、それは食べ物じゃないからな」
「私は断じておでんがいいと思います!」
「その理由は」
「今無性に食べたいから!」
「歪みねえなあ、お前」
恭ちゃんがため息をつきつつも、提出する予定の紙の裏におでん、と書く。はてさて、ほかは
何かあるかなぁ、と思いすぐ隣に座っていた佐藤くんに身を向ける。
「佐藤くんは?」
「……えっ、あ」
私がそうやって聞くと、佐藤くんははっと我に返ったように頬杖をつくのをやめて、私のほうを見る。が、その瞬間、いきなり顔を赤くしたかと思うとばっと露骨に顔を逸らされ、そして
いきなり立ち上がって、
「帰る」
「えっ、あ」
「佐藤!?」
私たちが止めるのもお構いなしに、ずんずん教室のドアのほうへ歩き、そのまま乱暴にドアを
開けたかと思うと、慌ただしく去って行ってしまった。
残された一同は、ぽかんと口を開けて、慌ただしく去って行った佐藤くんの後姿を、もう見えもしないのに、ずっとドアのほうを向いていた。
真っ先に口を開いたのは、恭ちゃんだった。