佐藤くんは甘くない



「……どうしたんだ、佐藤」

「私が聞きたい」

「そういえば、修学旅行が終わったあたりから、佐藤くんの様子、ずっとおかしかったような……」

「私が休んでる間も?」

「あー確かに、そんな気がする。お前が学校来るようになってから、ますますひどくなってるっていうか、むしろお前がなんかしたからだろ」

「冤罪にもほどがある」


そう、修学旅行が終わってからしばらく経つが、なんか佐藤くんの様子がおかしい。それは主に、というかむしろ私に対してだけ。


風邪が治って、2日ぶりに学校へ登校して、下駄箱で遭遇した佐藤くんに挨拶したら、うわ、って驚かれ、きょろきょろ視線を泳がせながら、普段なら返してくれる挨拶すらままならいまま、佐藤くんが逃げるように走って行ってしまったときから、なんとなく違和感は感じていた。



そして、12月に入り、現状はますます悪化する一方だ。


私の顔が見えるや否や、取って食われる、とでも思っているのだろうか、私から逃げ回る。恭ちゃんやひまりちゃんが近くにいるときは、それも収まるらしいのだが、いかんせん、私が声を掛けたり、二人っきりでいたりすると佐藤くんはかくれんぼしているんじゃないかと錯覚するほど、逃げ回る。



……なんなんだろう、まったく。




< 744 / 776 >

この作品をシェア

pagetop