佐藤くんは甘くない


「なんか知らんが、あんまり仲をこじらせんなよ」

「うう~ん。分かった、とりあえず佐藤くんと明日話せるように頑張ってみるわ」


なんて簡単にそんなことを言っていたのも、私の考えが甘かったからだろう。


その次の日、授業終わりに、実行委員の招集がかかり、会議が終わった後───課題を教室に置き忘れた私は恭ちゃんと別れた後、一人静かな教室のドアを開く。
もう下校時刻に近いし、誰もいないだろうな、と思って開けたドアの向こう側に、彼はいた。

一人、ぽつんと真ん中の席に腰を下ろして、何をするでもなく、ただぼうっと冷たそうな風が吹き付け、がたがたと揺れる窓を見ていた。



これは、チャンスだろう。


私はしめた、と思いながら忍び足で彼に近づく。
向こうはほとんど意識がどこか違う場所に向かっているようで、私に気付く様子は全くない。
そして、彼の後ろまでやってきて、思い切り両手を上げて、ばん! と彼、佐藤くんの両肩を叩く。



「わ!!」

「……っ!?」



ぴくっと肩を震わせて、佐藤くんが声にならない悲鳴を漏らして、私のほうをばっと振り返る。


「なにしてんすかぁ? ひまりちゃんと一緒に帰ったんじゃ、」

「あ、」


なるべく、明るい笑みを作って話しかける私の言葉を、佐藤くんは遮った。



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