佐藤くんは甘くない


「なんすか、これ」


私が瀬尾の方を向くと、


「フラグだよ。イベント発生だな」

「ふらぐ?」

言いなれない感じで佐藤くんが首をかしげる。


「ほら、デートの誘いとか何か一緒にやるって時に出るんだよ」

「なるほど。これはいい予習になりそうッスね」

「で、でえと」


いきなり、ぎこちない操作をし始める佐藤くん。

うわ、佐藤くん顔真っ赤。早いよ、佐藤くんデートまでの展開でドキドキするのは分かるけど、まだちょっとドキドキするの早いよ!


『どうかした?』

主人公、漆黒の美少年がそういうと、雛森さんはなぜかためらうように視線をきょろきょろさせて、それからぎゅうっと手を握りしめて、


『い、一緒に帰りません……か?』


上目使いで、もうなんていうか女の私も全力で抱きしめて守りたいって思うくらい可愛い困り顔で言った。


< 75 / 776 >

この作品をシェア

pagetop