佐藤くんは甘くない
うむ。
私は何でもないような顔をしつつ、
「可愛い」
「人気投票一番だからな」
「得意げで言う瀬尾が気持ち悪い」
伊達に数百時間やってないな。瀬尾。
確かにこのウブな感じがひまりちゃんと似ていて、人気一番になるのも頷ける。
けれど、瀬尾は納得の顔で頷く私とは真反対で鼻の頭を掻きながら、渋い顔をしていた。
「いや、可愛いってだけじゃなくて───」
瀬尾が何かを言いかけた、その時。
「結城」
珍しく佐藤くんが私の名前を呼んだ。
「はい?」
あら、佐藤くんってばなんかすごいきょどってる。
佐藤くんは、口元に指を当てて、これから世紀最大の謎を解く名探偵のような険しい顔つきで、
「い、一緒に帰る時って俺どっちに立てばいいの?って言うか、一体どんな話すればいいの?脚って右から出せばいいんだっけ、って言うか、そもそも横に並んで歩くべき?で、でもそれだとなんかなれなれしい気がするし、」
まったくどうでもいい推理をしているようだった。