佐藤くんは甘くない
佐藤くんは、何も言わなかった。
しばらく黙っていたけれど、もう迷いはないのか。それとも、いっぱいいっぱいなのか。
カーソルを1に合わせて───
『いいよ』
「……いいよ」
主人公と声が、重なった。
私は、一瞬だけ息を飲む。
佐藤くんの表情に迷いがないことに、あんまりに真剣だということに。
そして、もう一度丸ボタンを押して───
『ありがとう、』
そういって雛森さんが儚く口元を緩めてほっとしたように、笑みを浮かべて。
ゆっくりとその口で───