佐藤くんは甘くない








白目を剥きそうになった。

というかもう、剥いていた。


私は悲鳴が出るなんて生半なものじゃなくて、背筋が凍って体が動かなかった。


ぎぎぎ、と振り返るとなぜかすべてを悟ったような表情を浮かべた瀬尾。



「な、なんですかこれ」


「雛森くるみが人気投票で一位なのはこのらぶ♡パッションの中で一番攻略が難解で選択肢間違えたら一発直通ヤンデレルートだけど達成したときの感動と達成感が半端ないからなんだぜ」


「…………そのルートを攻略するには」


「まず、周りの女子を攻略してって分岐を出さないと無理かな」


「そ、」



私はゆっくり立ち上がって、瀬尾の前までやってくると大きく手を振りかぶって───



「そ、れ、を、先に言えよぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」



───バッチーン!!

かくして。

初めてのギャルゲーは私たちに一生消えない、恐怖の傷を与える結果になったのだった。




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