佐藤くんは甘くない
「今いくー!」
ふう。
内心ほっとしながら、私はまた帰り始めようとしている佐藤くんに、
「ちょ、待っててくださいいいですか!?待ってないとひよりちゃんが好きだってこと、」
「分かった、分かったから……!さっさと行ってきて」
佐藤くんに怒鳴られてしまった。佐藤くんが女嫌いじゃなくて、触ることができたらきっと私今頃墓に埋まってそうだなぁ、私。
パタパタとスリッパの音を立てて、私はお母さんのもとへ走ると大きめのタッパーを紙袋に入れて手渡してくれる。
「やーやーお待たせいたしましたー!」
「……」
なんだ、とでも言いたげに佐藤くんがフンと鼻を鳴らす。
そんな態度に苦笑いしつつ、それを差し出す。
「これ、おすそ分け兼おわびの品です」
「なに?」
佐藤くんがそれを大人しく受け取ると、紙袋の中身を見る。