佐藤くんは甘くない
「……これ」
「おでんです!わたくしのお母様直伝の特製のおでんですよー!めっちゃうまいですから折り紙つきで太鼓判押します!」
「……」
佐藤くんが顔を伏せたまま、それをじっと見つめているのが見える。うふふふ、感激のあまり言葉を失ったか、佐藤くん……!
さてと、そろそろかな。
私は片耳を外から走ってくる足音を聞きながら、口元を緩める。
「───おっ、良かった、間に合ったみたいだな」
がちゃり、といつものように私の家の玄関を開けて入ってきたのは───瀬尾。
瀬尾の手にも大きな包みが握られている。それを驚いた顔の佐藤くんに押し付けるかのように、
「はい、これ」
「……」
「俺ん家の特製にくじゃが!あったかいうちに食ったほうが上手いからな」
佐藤くんはて、両手いっぱいに私たちからのおすそ分けをじっと見下ろすと、いきなりぷっと吹き出し始める。