佐藤くんは甘くない


***


「5月と言っても8時頃は暗いッスね、やっぱり」


そのあと、玄関で瀬尾と別れ、私と佐藤くんは街灯がぽつぽつと灯る歩道を少しだけ離れて歩いていた。


ぼけーっと通り過ぎる車を見ながら、なるべく後ろにいる佐藤くんを置いて行かないように気を付ける。


「明日はいよいよひまりちゃんと一緒に帰るんですから、頑張らないといけないッスね」

「……ごめん」

「はい?」


佐藤くんが、もう一度ぽつりとつぶやいた。


それは、誰かが口にするよりももっと重く、胸の中に入り込んでくるように。



「……ごめん」



佐藤くんが、ぴたりと足を止める。私も足音に気付いて、進めていた足を一歩後ろに下げて、振り返る。


佐藤くんが、随分小さく見えた。


身長的には私よりも少しだけ高いはずなのに、苦しそうに眉を下げてしゅんとする佐藤くんは、ひまりちゃんよりももっと小さく見えた。



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