佐藤くんは甘くない
「……何がですか?」
「……俺、いろいろ協力してもらって、それで、ちょっとは変わるかもって、思ってた」
佐藤くんが、そういって一歩、私に近付く。
そして、ゆっくり───私の腕に手を伸ばして、
「…………っっ」
そして、それは数十センチの間を開けて、止まる。
佐藤くんの手が震えていた。ぐっとこらえて、かみしめた唇さえ青白く変色していく。
ぎゅうっと目をつむって、それから諦めたように息を吐いて、伸ばしていた手がやがて下ろされた。
「でも、根本的に……何にも、変わってない」
「……」
「こんなんじゃ、ダメなんだ。こんなんじゃ、また、」
「……」
「明日も、きっと……いっぱい、結城にも、瀬尾にも、めいわく、かける……」
「……」
「……ごめん」