佐藤くんは甘くない



佐藤くんが、小さな声でまた謝った。

それは一体、どういう意味なんだろう。


変わらない自分が不甲斐ないから、謝るのだろうか。

それとも協力してきたにも関わらずいつか───呆れてしまう、と怖さから謝るのだろうか。


たぶん、それは両方。


佐藤くんはどこか頼りなく、軸すらぐらぐらの天秤の上でどうしていいか分からないまま、なんとか水平を保っているような気がした。


それなら、私が言うことは───



「───なぁんだ」



きっと、これが正しい。



「そんなの、承知の上ですよ」


「……ぇ?」


「むしろ佐藤くんがそんなに早く女の子と話せるようになるだなんて、私たち、ほんの少しも一センチも、一ミリも、一ミクロンも思ってないッスから!」


「っっ、……悪かったな」


佐藤くんがむっとしたように、向こうを向いてしまった。


ああ、また。

ちょっとだけ佐藤くんが笑った。私はそれが、なぜだか無性にうれしかった。




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