佐藤くんは甘くない

「焦らなくてもいいんです」


「でも、」


「焦ったところで、いきなり佐藤くんの女嫌いが治るわけでも、ひよりちゃんが佐藤くんを見てくれるわけでもありません」


「……」


「佐藤くんはもっと私たちを頼っていいんですよ。なにせ、私も瀬尾も、佐藤くんを応援する恋のキューピットですから！」



ばん！と豪快に胸を叩いて、私はにんまりと笑う。


佐藤くんは一瞬、呆気にとられたように目を見開いて───そして、そっかと小さく、本当に小さく呟いた。


「……正直、分かんない。どうやって頼ればいいのか、とか。……どこまで頼ればいいのか、とか。分からなくなる。

　今まで、困ったことは全部───自分で何とかしようって思ってたから」


でも、と佐藤くんは続けて言った。



「……うん、ありがと。頼る」



きゅうんっと、心がときめきそうになる。だって、佐藤くんってば、そんな可愛らしい天使みたいな笑みをされたら誰だってそうなるってーの。