佐藤くんは甘くない


うむ、私はくるりと向き直って、


「じゃあ、まず明日の目標はひまりちゃんから電話番号か、メアドか、LINE聞きだすことで!」


「っ、む、無理っ。朝比奈さんとメールとかっ、電話とかっ」


「ちなみに朝掛けたときのひまりちゃんはかなり寝坊助なので、吐息とかよく聞こえますよ」


「───っ、ばぁああああかっ」


「いてっ」


後ろから何やら固いものが飛んでくる。痛い。容赦ないな、佐藤くん!

ごろ、と私の背中の鈍痛の後、聞こえた音に視線を向けると、佐藤くんのスクール鞄が落ちている。


「佐藤くん手加減という言葉を知らないんですか!」

「知ってる知ってる。怒りに身を任せて思いっきり怒りをぶつける事でしょ?」

「佐藤辞書は一体どうなってるんだ!?」

「知らないの?ベストセラーだから」

「世の中が終わるわ!」


私たちはそんな話をしながら、佐藤くんの分かるところまで送って行った。

佐藤くんはきっと、大丈夫だろう。

なんらたわいない会話をしながら、こうして笑い合っているのだから。


きっと、佐藤くんだって女嫌いを克服できる日が近いうち来るだろう。






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