佐藤くんは甘くない


***


「じゃあ、もう一度作戦のおさらいをしましょう」


私たちは、多くの人が疑いの目でやたら見てくるのも気にせず、廊下の物陰でしゃがみこんで顔を近づける。


佐藤くんはやたら緊張しているせいなのか、私が案外近くにいても驚かない。


物凄い険しい顔で眉を寄せて、

「サヘラントロプス・チャデンシス、オロリン・ツゲネンシス、アルディピテクス・カダバ、アルディピテクス・ラミダス、アウストラロピテクス・アナメンシス、」


と何やら呪文のような長い分をずっと復唱していた。


よく聞いてみたら、人類種を順番に復唱していた。

どんだけ緊張してんだよ佐藤くん。


「今、ひよりちゃんが職員室で先生の所に提出物を出しに行ってます」


視線を横にやると、瀬尾が小さく頷いて、

「んで、朝比奈が出てきたところで、」

「佐藤くんがさりげなく、職員室の前を通って生徒手帳を落とす!」

「……ぁ、うん」


佐藤くんがはっと我に返ったように、こくりと頷いた。


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