佐藤くんは甘くない

「ひまりちゃんがおそらく生徒手帳を拾い上げるはず」

私が小さく頷くと、


「そして俺がさりげなく後ろから、佐藤に声を掛ける。おい、一緒に帰ろうぜ」

「佐藤くんが、はあ?意味分かんないんだけど。全然お前となんて帰りたくねえし。……でもお前がどうしてもって言うなら、仕方ないふんっ」

「それ俺のマネ?殺すよ」

「スイマセンちょっと調子に乗りました」


佐藤くんが浮かれた顔から一転、真っ黒な瞳でこちらを見てきた。


「さして、私がかっこよく登場!」

びしっとキメポーズ!

通りがかった1年女子の子が、うわあといいたげな眼差しを向けて通り過ぎていく。


……うん。

…………うん。


「恥ずかしがるなら最初からやるな」

ジト目の瀬尾が、飽きれたように言う。

「……穴があったら入りたい」


くっそう。

この恥ずかしさをばねにしてやる!


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