佐藤くんは甘くない
「───失礼しました」
そうこういっている間に、隠れた廊下の角の向こうでひまりちゃんの声が聞こえた。
私がちらり、と角から覗き込むと、まだ職員室の入り口前で先生と話しているようだった。
「じゃあ、頑張りましょう」
「ああ」
「うん」
三人見合って、小さく頷く。
「佐藤くん、GO!」
佐藤くんが小さく頷くとすくっと立ち上がって、角からすっと身を出す。
その姿を見て、うわっ。
私は思わず仰け反った。
佐藤くん、足と手が一緒に動いてるよ!!
一体どんなギャグを噛ますんだねキミは!!
頭を抱えそうになる、でもこんなところで立ち止まるわけにもいかない。
佐藤くんが手に隠していた生徒手帳をちょうど、ひまりちゃんたちがいる場所の後ろで落とす。