佐藤くんは甘くない
うがっ。
やべえ、この声……!!
ぞわっと背中に冷たいものが流れ込んできたような感覚。
私は、一瞬固まった体を無理やりに動かして、一歩踏み出そうと息を飲む。
「逃がすか!」
「いやぁああああああああああああっ」
襟首を掴まれたかと思うと、ぐいいっと後ろに思いっきり引っ張られた。死ぬ。それはさすがに私でも死ぬッス。
「あれ、こはるちゃん……?」
向こうで話していた、ひまりちゃんが最悪のタイミングで私に気付いた。
そしてそのまた隣で、はああ、とため息をつく瀬尾と、視線を下げる佐藤くん。
「い、いやーなんのご用でしょうか」
私は寝首掴まれた猫のように、後ろで睨みを利かせるその人を振り返る。
「俺の顔を見れば分かるんじゃないか?結城」
───学年でも有名な鬼教師、数学の唐沢。
「あ、青のりついてます」
「フザケタこと抜かすと平常点も抜くぞ」
「すいませんでした」