夢幻罠
あたりに気を付けながら車を飛ばした。

フォグランプを点けたままだった。
消した。

ちらほらと人家があった。

寿司屋があった。閻魔(えんま)寿司という名だった。

…記憶になかった。
名前も門構えも……。

次にバー不夜城というネオンがオレンジ色の光で闇を引き裂いていた。

急に人恋しくなった。

それにここで道を尋ねれば、さっきの疑問は解消する事になる。

広い駐車場にバックで入れた。

初めての店に入る時はいつの時も緊張する。そしてそれ以上に期待する。内装はどうだろう?綺麗な女はいるだろうか?…etc.

ここに入る時も例外ではなかった。

入口は中二階になっていて、低い階段上にあった。

廂(ひさし)代わりになっているアクリルの電光板の下の階段を五段上がった。

Openと書かれた木のプレートの掛かった真白なドアがあった。

中に入った。

プシュと気密の良い音を立て、ドアは閉まった。

前面が鏡張りになっていた。

(まいった!?)

左右も鏡…。

…まさか後ろは?
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