夢幻罠
だから、食べる事はもとより、摘む事も許されぬ存在なのだ。

それを納得させると、もう一つの気掛りを考えた。

…脇道にそれてから今までの状況が腑に落ちず、テレビに止まった蝿のように気になっていたのだ。

それをマスターに尋ねた。

道は合っていた。

そしてこの町を抜けた所に目指している吊橋は、あるということだった。   

…良かった。

危惧は危惧で終わったようだった。

…ほとんど昼間だけしか使わなかった道なので、夜は景色が違って見えただけのことだろう。

俺は二杯目のマティーニを空け、失礼と思われないか気にしながらスミレのように可憐な横顔をもう一度見ると席を立った。

そして会計を済ませ、トイレに入った。

(まいった!?)

ここも八面鏡張りだった。

俺は小用が終わると、入って来た所の鏡を押した。

(エッ!?)

ビクッともしない。

引こうとも思ったが取手がない。

勘違いだったのかと、左右も押した。

動かない。

(まいった!?)
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