夢幻罠
「まさか?…イタチだろう」

「エッ!?イタチなんているの?」

「じゃ、オオカミならいるのかよ?…あれは大きさと体型から言ってもイタチだよ。オオカミとかライオンじゃないね」

俺の上腕を握った彼女の力が強まった。

「…じゃ、あれは!?」

オレンジ色の大きめの弱い光をみとめた。

それはだんだんと三角を形どっていった。

速度を落とした。

…一瞬“S・スピルバーク監督”の『未知との遭遇』の一場面を思い出したからだ。

ライトの中に入った物体は、オレンジ色の光を三角形に強烈に反射した。

(フーッ!?)

それは三角掲示板だと思えた。

…しかし何でこんな所に……?

更に低速にした。

案の定、車の前に人間が飛び出してきた。

もう関わりたくないというのが本音だったが、ボンネットを抱えるようにしているその人が許してくれそうもなかった。

停止した車の横にその人が来た。

俺はウィンドを下ろした。

「すみません。車が故障してしまったのですが、見ていただけませんか?」

また女だった。もう女は懲り懲りだった。

しかしこのまま困っている女を見捨てられる程、俺は自分に自信を持ってなかった。

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