夢幻罠
「…車に関しては素人なので、期待に添えられるか分かりませんよ」

と、懐中電灯を掴むと、外に出ていた。

…同時にフェミニストに生れた自分を恨んだ。

女は左の路側にボンネットを開け放たれたままにしている車を指差した。

後ろから女と車を同時に照らした。

その光を女に集めた。凄艶な美女だった。

(……!?)

次の瞬間、驚きが脳にジャブをくれた。

その女の顔は…!!

女が光の中で目を細めた。

似ている!

驚くほど似ている。

車の中に居る二人と同一の顔と思えた。

(まいった!?)

心臓が不快な激動をはじめた。

しかも白く浮き立つ顔を一つひとつ凝視すると、パーツは違っていた。

目は知的なシャープな感じを受けたし、鼻は副鼻の小さな尖った繊細な感じだった。口は小さめだ。ヘアースタイルも二人とは違い、肩までの長さのボブカットだった。

共通した所は、年齢が20歳少し過ぎと思える事と、小さな顔、それに透き通るような白い肌ということだけだった。

顔の造作は明らかに違っていた。

しかし似ていた。

似て見えた。
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