夢幻罠
女の照らす光の中を、エンジンまわりを調べた。どこも外れている所やおかしい所はないように思えた。

工具を出してきてもらった。

オイルの残量を調べた。

次にプラグをいくつか取り外すと、燃料の燃えカスを払った。

またエンジンをかけてみた。

セル・モーターは力無く回ったが、数秒後には止まった。

全てのプラグを外した。そして一つひとつ磨くように掃除した。

またまたエンジンをかけてみたが、今度はモーター音もしなかった。

俺にはもうお手上げだった。


俺の車は新しく加わった女を乗せて、幾分薄くなった夜霧の中を走っている。

もう時間は二時に近かった。
これでは近道した意味がないように思えた。
しかも意外な荷物を三つもしょいこんでいた。

そのお荷物たちは、今知り合ったばかりとは思えないほど意気投合して、くだけた話をしている。

最後に拾った女は、しばらく真直ぐ走れば、例の橋にたどりつけると言っていた。

ライトの光が遠くまで届くようになった。霧が薄くなったのだ。

視覚神経に詰めていた根が解き放された。

車の走りも快調になった。

しかし解せなかった。

…何故、三人の女が全く同一に見えたのか?

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