夢幻罠

5


いま俺を含めた四人は、俺の3DKのアパートにいる。

まるく座り、水割りを傾けている。

一人では広過ぎると感じた3DKも、四人だとうさぎ小屋のように見えた。

三人を見比べると、三人三様の顔をしていたが、改めて誰が誰かと言われると区別がつかなかった。

オーラというものがあるとすると、三人の発するオーラは同一と思える。

それが同一の雰囲気を醸し出していると思える。

彼女たちは俺の勧めで、先に風呂に入った。

彼女たちの使うシャワーの音が俺の耳に届き、何故か“J・D・サウザー”の『ユア・オンリー・ロンリー』の物悲しいメロディーに転化した。

俺は服を脱ぐと、風呂場に入った。

カリテス(*ギリシャ神話の美の女神)のように透き通った肌の均整のとれた裸体が三つあった。

一人がシャワーを浴び、二人は湯ぶねにつかっていた。

しかし俺には、誰が誰だか分からなかった。

不思議な事に三人とも、声を上げるどころか、裸を隠す動作も行わなかった。

まるで、俺が当然入ってくると思っていたかのように……。

俺の頭の中には相変わらずユア・オンリー・ロンリーの物悲しいメロディーが流れている。

俺はシャワーを使っている女の後ろにまわった。
一緒に浴びた。
< 40 / 64 >

この作品をシェア

pagetop