夢幻罠
カーブが終わった。

心臓が強く締めつけられた。

(アッ!?)

視界に明りが飛び込んできた。

一瞬喜びに胸が弾んだ。

…でも生活を共にするとなると楽しい事ばかりではないだろう。部屋に足を踏み入れるまで、葛藤は続いた。

ドアを開けると、

「お帰りなさ~い!」

という温かい声がした。

俺は三人のはにかんだ顔を見ると、自然に頬が緩んだ。

翌日もデータ・ベンチャーズ社に行った。

うまくいくと10台ぐらいは売れるかも知れないと皮算用していたコンピューターが、思い掛けず50台もの発注を受けた。

それに徐々に古い物を入れ替える必要があるということで、今後にも期待が持てた。

ようやく俺にも運が向いてきた。
今まで、同期の梅沢にトップ・セールスマンの地位を欲しいままにされてきたが、今月は抜く事が出来るかも知れないとほくそ笑んだ。

次の日の会議の席上で、俺は課長に持ち上げられるだけ持ち上げられた。

梅沢の臍(ほぞ)を噛むしぐさが印象に残った。

俺は今日もはりきって仕事に行った。

そこでまたまた10台の注文をもらった。更にシュレッターを欲しいと言われた。

カタログを持ってきてなかった。
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