夢幻罠
「フーン。じゃ、その人たちによろしく」

俺は電話を切った。

もしかしたら、三人の妖精たちの妖しく不思議な波及効果によって、急に販売が伸びたり、もてるようになったのかも?と一瞬思った。

(アッそうだ!?)

…車のトランクに、カタログが……

俺は駐車場に急いだ。

どこかののら犬が、俺の車のトランクに前足を掛け、爪を立てていた。

鞄を振り回し、声を上げ、犬を追い払った。

…まったく、ふざけた犬公だ!

トランクを開けた。

(アッ!?)

目から入ったインパルスが、脳を直撃した。

驚嘆と疑心で、開いた口が塞がらなかった。

初老の男の朽ちかけた死体が入っていたのだ。

…バカな!?

頭で把握する前に、体中の血が撤退を始めた。

トランクを閉めた。

バンパーに手を付き、崩れようとする体を支えた。

三半規管が馬鹿になったように、天地が渦を巻いた。

やっと植え込みの中に這って行くと、嘔吐した。

昼に食べたパスタが形のまま出てきた。

まわりにいた人たちが、
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