夢幻罠
バーの倉庫か軒下に隠しておいた物を、俺の車のトランクに入れる余裕は充分あったかも……
それにトイレから出たときマスターがいたのも、俺が気付いてないか、顔色を見に来た仕草かも……?
あと考えられるのは、最後の女の車の修理に夢中になっていた時だ。
夜霧にまぎれて、彼女の車の中に入っていた死体を担ぎ出し、俺の車に移動するのは造作も無い事だろう?
…まてよ!?
最後の女は俺の横でズーとライトを当てていた。
…やはり、その線はないか?
…でも、彼女たちが共謀してやったとしたら可能だ。
そんなバカな!?
彼女たちは初めて会ったと言ってたし、別々に違う場所で拾ったのだ。
理由もちゃんとあった。
しかしよく考えると、俺は盗まれる物が無いということで、長時間駐車をする時以外は鍵を掛けなかった。
運転席の下のレバーを引けば、鍵がなくともトランクは開けられる。
つまり、この四日間だけでも、無限に可能性があるのだ。
…さっきの得意先の駐車場もその一つだった。
俺は舌打ちした。
…盗まれて困る物はないが、入れられて困る物はある。
しかし最も問題は、今後の事だ。