夢幻罠
…このまま警察署に直行して死体を渡すか?

…それがベターなのは分かる。

でも事は殺人事件だ。

俺は第一発見者というより容疑者として取調べられるだろう。

社会的面子もある。

それに彼女たちも場合によっては容疑者として扱われる事に……。

さらにだ。一人の女は家出してきたと言っていた。

…俺は誘拐だの、軟禁罪だのとあらぬ容疑をかけられる可能性も……。

…冗談じゃない!

…つまりだ。警察を介入させると、俺たちの微妙な関係は崩れ去る可能性が大きい。

…どう考えても、尋常な関係ではないからだ。

…しかしそれが何だというのだ。

現に俺は幸せだし、彼女たちも喜んでいる。

それに彼女たちが来てからウンも向いて来た。

でも、たった一人の女も幸せに出来なかった俺が、三人も出来るのだろうか?

俺は夕べの行為を思い出した。

彼女たちは一人で俺を独占しようというそぶりはなかった。

それは一抹の寂しさは感じるが、それ以上に助かっている。
微妙なバランスの上に成り立っている関係には独占欲がマイナス要因になる可能性が大だからだ。

俺も平等に愛を与えているつもりだ。
< 48 / 64 >

この作品をシェア

pagetop