夢幻罠

少しまわりが明るくなった。

それは後ろからのライトだった。
たぶん業を煮やした後続車が、俺が近道を行ったと信じて付いて来たのだろう。

ルームミラーから、四、五台の車が来るのが分かった。

責任を感じた。

俺が間違えば、全ての車が路頭に迷う事になる。

しかしもう一方で悪戯心もわいた。

俺がいい加減な道を行けば、後ろの車は骨折り損のくたびれ儲けということになる。

何も俺が付いてこい!
と、言った訳ではないのだ。誰も誰にも怒る事は出来ないのだ。

しかしそんな暇に付き合っている訳にはいかなかった。
俺は諸君たちと違って仕事で遅くなっているのだ。
諸君たちの遊びの延長に付き合うほど暇人ではない。

霧が一段と深みを増してきた。

もう2、3m先しか見えなかった。

フォグランプを点灯させた。

しかしその黄色い光も殆ど役に立たなかった。視界が1m、いや50cmほど伸びたにすぎなかった。

(アレ!?)

フロントガラスにライトが当たった。
後ろの車がパッシィングしたのかもれない?

まずルームミラーで後ろをみた。

ライトを上向きにしているようで光の粒しか見えない。
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