夢幻罠
その体勢のまま、土をゆっくり除いた。

…頭蓋骨だった。

それも俺のふるったトウグワによって頭頂の部分が欠けていた。

…そこが真新しい白なので分かった。

それに鼻先を付ける距離で罪を詫びた。

しかし今の俺にとって怖いのは、人骨や幽霊よりも、人間だった。

…そして別の意味で、俺を含めた人間はよほど幽霊などより、冷血になれる鬼だと思った。

何とか埋められると思う所まで掘った。

車に戻り、ボディーカバーを外し、死体を取り出そうとした。

男の死体の下に、大きめのレジ袋位の黒いビニール袋があった。

見覚えのない袋だった。

死体の下から引っ張り出した。

かなりの重さを感じた。

口はガムテープでガッチリと止めてあった。

ナイフで切り込みをつけた。

ビニールは二重になっていた。

切り込みから指を差し込み、裂いた。

ウワッ!?

思わず大声を張り上げそうに……。

腰が引け、後ろにもんどり返った。

中から乳飲み子の死体が……。

…落ち着け

…もう慣れっこじゃないか
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