夢幻罠
俺は足を掴むと、墓場に引き返した。
※
俺は肩で息をしながら、車の陰で着替えをした。
レジ袋に汚れきった服と手袋を入れた。
車をバックする時何度も木の枝にボディを擦った。
しかし、そんな事はかまわなかった。
入る時より、出るほうが数倍嫌だった。
入る時は目的があったが、今は恐怖と不安だけだった。
心臓の鼓動が車内中に響いているのが分かった。
助手席に置いてあるレジ袋が気になり、途中で何度も捨てようと思った。
しかし、そこから足がつくかと思うと、できなかった。
後で彼女たちの隙をみて、燃やそうと考えた。
アパートに着いた。
寝ている彼女たちを確認した後、シャワーを使った。
血が滲むほど何度もなんども体を擦った。
朝、明るい声で起こされた。
体がだるく、頭痛もした。
折角用意してくれたみそ汁とご飯も、箸を付けるだけで終わった。
彼女たちは俺の顔色が悪いので、心配してくれた。
俺は、心配いらないと言うと、当座の生活費としてテーブルに十万円を置いた。