【短】あの人と私~赤ずきんの恋~
週末の夜、家で明日香とスパゲティーを作って食べた。


胸がいっぱいで食欲がない私に、明日香が声をかけた。



「由紀、最近なにかあった?」


「え…?」


「食欲ないみたいだし、時々なにか考え込んでるでしょ?」


「う‥うん…」



心配してくれている明日香に、あの人のことを話そうか迷った。


だけど、今あの人のことを明日香に言ったら、

本当に後戻りできなくなる。



「明日香、ごめんね、心配かけて‥。
もう少し一人で考えてみる」


「そう?
もし由紀が前の彼のことで悩んでるなら…」


「違うの…。彼のことは、もうなんとも思ってない。
まだ恋をするのは少し怖いけど…」


「わかった。由紀が助けてほしい時はいつでも言ってね!
友達なんだから」


「ありがとう」





短い髪をかきあげてクシャッと笑う明日香の笑顔が、とても優しかった。




私には、私を思ってくれる明日香がいる。


だから前に好きだった人のことも乗り越えられた。


正直、今でも彼のことを思い出すと恋することが怖くなる。



なのに、私はあの人に恋をしている。




あの人が、


私に光を差してくれたから…。








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