【短】あの人と私~赤ずきんの恋~
最後のキス
職員室へ戻った私の机の上に、たくさんの写真が置いてあった。

その写真には、三年A組の生徒たちが写っている。



私の隣の席の細川先生が、私に声をかけた。


「幸田先生、その写真A組の卒業アルバムに使えそうだったので出しておきました。
野田先生が戻ってくるまで幸田先生が預かっていて下さい」


「はい」




生徒達の眩しい笑顔…。


私は写真の生徒達の笑顔に、顔がほころんだ。



春に転校してきたあの人の写真は数少ないけど、

ちゃんとここにいる‥。



光り輝いてる…。







「あっ‥そうそう、野田先生来月から復帰するそうですよ」



細川先生の言葉は、

あの人と過ごせる時間のタイムリミットだった。



野田先生が戻ってくると、

私はまたあの人に会うことがなくなる。







これは、きっと神様からの忠告だね…




私はあの人の傍にいてはいけない


もう夢の時間は終わりだよって…。




この写真達の中に、私は写っていない。


卒業アルバムの同じページには、けして写れない。





眩しい青春時代を


私は遠くから見守ることしかできないんだ…。





そうしなくちゃ




いけないんだ‥。









あの人の大切な青春時代の心のアルバムに、これ以上踏み込んではいけない。



私のために、これ以上大切なページをめくらせてはいけないよね。







あの人の


大切な青春時代に…。









< 23 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop