コノ想い届ケ



「なぁ!どうなんだよ!ボーッとして…」


悠はハッとした。
すっかり打ち合いは終わってしまっていた。

二人は息を切らして悠の方を見ている。


「ん…?ごめんごめん。これなら大丈夫。覚悟を持ってね。あー、隼人!私とやろ。なーんか色々考えてたら疲れちゃった。」


宮川は悠に木刀を渡した。
何と言っても悠とやるのは腕試し以来だった。


「負けねぇよ。」


和田は中段に構えた。
悠は上段に構えた。

宮川が合図を出したと同時に和田は床を蹴った。
悠は和田の次々と繰り出される攻撃をいとも簡単に流していた。


「いやぁ…。本当、強くなった。まだ私と会ってちょっとしか経ってないのに。」


和田は楽しいと思うと同時に悔しかった。
全力でやっているのに悠は涼しい顔をして流していく。


こんなにも差があるのかと。



「でも、まだまだ。」


悠は後ろに下がったと思いきや、床を思いっきり蹴り、和田の懐に潜り込んだ。


「っ…!?」


そのまま突きを繰り出した。
和田は後ろに倒れ激しく咳き込んだ。


「ゲホッ、ゲホッ…!!こんなに…差があるのかよ…!」


「あはは!そりゃあ、組長って命じられたしねぇ…。」


悠は木刀を仕舞った。
考えていたこともすっかり吹き飛んだ。



「二人とも、ありがと。」


悠は笑って道場から出た。


< 47 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop