コノ想い届ケ
悠は師匠がいなくなった方を見ていた。
両手に刀を握り締めたまま。
「悠、無事か?」
後ろからその様子を見ていた斎藤は躊躇いがちに声をかけた。
悠は振り向くと笑った。
何処かいつもとは違い、ぎこちない笑い方だった。
「大丈夫!あ、もしかしてみんな待ってます?」
誤魔化すように明るく言い、刀を納めた。
「あぁ…。」
斎藤は何も聞かずに土方たちのもとへと戻った。
悠は少し名残惜しそうに吉田の死体を見て斎藤に続いた。
「悠!おせぇぞ!」
「すみません!息のあった者がいたもので。」
朝、新撰組は堂々と町中を歩いた。
町の人は何かをヒソヒソと話しながら横目で新撰組を見ているのだった。
これで新撰組の名は広まるのだった。
「怪我人共は山崎のとこに行け。……皆、ご苦労!」
土方の労いの一言でみんなは歓喜の声を上げた。
「悠!」
零番組の五人が悠に笑顔で近付いてきた。
悠は五人の姿を確認すると笑った。
「生きてる!良かったぁ…」
「悠もな!」
こうして互いに笑い合えるのは嬉しいことだ。
それに、強くなったという何よりの証拠だった。