コノ想い届ケ
『あーあ……。酷いことしてくれるねぇ…』
何処からともなく聞こえてくる声。
悠は辺りを見回すが誰もいないし、気配も感じられない。
『僕の息子をさー…』
「無(ムウ)!まだこのようなことをするのですか!」
悠は空に向かって叫んだ。
返事の代わりに返ってきたのは笑い声だった。
悠は刀を納め、それが来たあとを辿った。
血が点々とついている。
そして、悠が着いたところは酷い有り様だった。
「何てことを…」
倒れているのは女か男かも判断出来ないほどに食い荒らされた人間。
骨や肉が剥き出しになっていた。
「どうか安らかに…」
悠はその場で手を合わせ、冥福を祈った。
こんなことを止めさせなければいけない。
あの人に害が行く前に…
全てが終わった時には月が傾いていた。
「急いで屯所に戻らなきゃ…」
悠は閉じている門の前に来た。
誰もいないことを確認してその門を飛び越えた。