コノ想い届ケ
「俺はお前が何処に行っても嫌なんだよ。」
土方さん…
いつからそんな駄々っ子になったんです?
散々、女の人を振り回してきた貴方がどういう風の吹き回しですか?
そして、そんなに素直になれたんですね。
「私は女の人で遊ぶのが好きなだけです。いいじゃないですか、誰か他の男のもとに行くわけじゃないんですから…」
悠は手を合わせご馳走さまと呟いた。
土方の睨みが鋭くなった。
悠はこれ以上、機嫌を損ねないうちにと広間から出ていった。
「あー…危ない、危ない。」
悠は縁側を頭の上で手を組みながら歩いていた。
夏になり、日照りが強くなっていた。
気温も上がり、普通にしていても暑いほどだ。
「あちー…」
原田が縁側に寝転んでいた。
汗で引っ付く着物を鬱陶しそうにしながらバタバタと扇いでいた。
「原田さーん、今日は非番ですか?」
「おうよ。それにしてもあちーなぁ…」
眩しそうに目を細め、空を見上げていた。
悠も釣られて空を見上げると二羽の鳥が飛んでいた。
ただ長閑(ノドカ)だった。
「お前、稽古は?」
「あ!忘れてました…」
悠は笑って縁側を走っていった。
そんな様子を原田は笑って見送っていた。