17歳の遺書


そっと目を開ける。朝日が差し込んで、窓際にある私があげた花が輝く。
それなのに、隣にも、どこにもいつもそれ以上に輝くゆうはいなかった。

夢が現実になってしまったみたいで、怖くて怖くて仕方がない。


「ゆう。」と小さな声で呼んでみる。けれど、なにも帰ってこない。
怖い、怖い。どうしよう。


「ゆうっ!ゆうっ!お願い....帰ってきて!」
と泣き叫ぶように言う。

すると、
ガラガラ!!と乱暴にドアが開く。


ぎゅっと力が加えられ、苦しい。誰かに抱きしめられてる。
私を抱きしめる腕が、意外と硬い胸板が、全部が全部、暖かい。愛おしい。




『ゆう.......?』


『ん?俺、ここにいるよ。』


ああ、ゆうの声だ。私の大好きなゆうの声。いつ聴いても安心する。
誰よりもあったかい。

『ゆう。ねぇ、ゆう....『美帆!どこ行きたい?美帆の行きたいところに行こう!』


声が重なる。いきなりのことに驚く。どうして??


『どうして?ゆう、外に出られないって。』

『大丈夫!先生がいいって、
まぁ6時間だけだけど。』

照れたように笑うゆう。


『どこがいい!?』
続けるように聞く。


『観覧車に乗りたい。』
実はね私、観覧車が大好きなんだよ。でも、ゆうはあんまり高いところ好きじゃないみたいだったから言わなかっただけ。




『うっ、、、観覧車?俺さ、高いとこ...まぁいーや。美帆が行きたいならそこ行こう!どこ行けばある?』

え?いいの?、やっぱりゆう、優しすぎ。びっくりしすぎて、心臓とか止まっちゃわないかな。ちょっと心配だけど、、、


『遊園地!』

私のテンションの高い声にゆうはニコッと笑う。
『よしっ!じゃあ、行こう!』

くしゃくしゃと私の髪を触る。
ゆうのぬくもりがじんわりと伝わる。私の心臓を躍らせる。






楽しみで、楽しみで。
早く時が進んで欲しい。


『だから、午前は学校行って。』


『え、いやだよ。』


『だーめ。約束したじゃん』


『昨日、いいって言ったじゃん。』


『デートできるんだから、ちょっとぐらい我慢しなよ。』

とまた、くしゃっと笑うゆう。
その笑顔が大好きで、なんでも聞いてしまう。

『もー.....分かった。』


『おりこうさん。迎えに行くわ。』



『うん。分かった。待ってる。』


いつかと同じ声で言う。
待ってるから。ずっと待ってるから、いつもみたいに、暖かく迎えに来てね。



< 112 / 181 >

この作品をシェア

pagetop