17歳の遺書
美帆side






『泣かんで。』




耳元でささやかれたその声は私の全身を駆け回るように、包み込むように入ってくる。







ポロポロ出ていた涙も引っ込んで、
いつもよりも低く、大人っぽく響くその声に、思わずにやける。





『ばーか。泣いてないし。』




にやけてるのがばれたくなくて、
恥ずかしさを隠すように言う。


でもゆうにはお見通しで....



『にやけんなや。ばーか。』







『にやけてないし!!』
簡単にばれてしまって恥ずかしさが増す。







『ほらっ!行くよ。俺、めっちゃお腹すいたんだけど。』






体が離されて、ガラガラになったお腹が寒い。



無邪気に笑うゆうが今度は愛しくて、
すっごく単純な女だなと思う。




ゆうがポケットに突っ込んだ手を引き抜き自分の手とからめる。







あったかいな。やっぱ。
ゆうの全部を感じていたくて、
やっぱりゆうとずっとそばにいたくて、

そんなの絶対無理なのに、
わがままな自分を許して欲しいと思う。






あたりはすっかり暗くなってて、
もう道端の綺麗だった紅葉も見えない。






『あんまり遅くなると、お母さん心配するし、コンビニで、肉まんとかかおーよ。』



あったかいものが食べたい。





『よし、行こう。』










しばらく歩いて、普通にコンビニで肉まんと、ピザまんと、あんまんを買って、
2人でちょっとずつ食べた。






なんにもしてない普通の帰り道を歩いただけなのに、ゆうがいるだけでいろんなことが違って見えて、いつもと全然違う景色で。




もっともっとゆうを求めてしまう。








ゆうは私を家まで送ってくれて、
最後にぎゅっと抱きしめて私の口に
ちゅっとキスを落とした。


『また明日、迎えにきてね。』






『りょーかい。』




ゆうと話して、手をつないで、キスをして、頭の中はゆうでいっぱいで、






また明日も一緒に行けるのかと楽しみでたのしみで、夜も全然寝られなかった。
< 76 / 181 >

この作品をシェア

pagetop