蜜月クライシス!【BL】
「か、可愛い……」
「今回のは幼稚園時代の咲都だ」
時折彰那は、晶の知らない咲都の写真を見せ付けて晶に話をすることがあった。
勿論、勝手に写真を渡していることが咲都にバレれば2人とも確実に怒られるだろう。
だがそのリスクと引き換えに、彰那は他には言いにくい相談を、晶はレアアイテムをゲットする、というウィンウィンの関係が成立するのだ。
「これが欲しいなら俺の話を黙って聞け」
上から目線な言葉が少し気になりつつも、咲都は絶対にアルバムなんて見せてくれないのが分かっているだけに、晶の目には彰那が神々しく見えていた。
「聞くよ。何でも聞く。だから今すぐそれをくれ!」
勝手に操作しようとする晶の手から携帯を奪い取った彰那は、人気の少ない寮の隅へと晶を誘導する。
そこでまた誰も居ないのを確認して、彰那は口を開いた。
「──最近、神宮が咲都のことばかり聞いてくるんだ」
「定期テスト近いからだろ。さりげなーく高槻に『勉強しろ』ってことじゃないの」
「アイツはそんなまどろっこしいことはしねぇよ」
「そうか。お前バカだもんな」
晶の『バカ』発言に彰那の顔色が微妙に変わるが、言い返せないレベルで事実なのだから仕方がない。
学年トップクラスに囲まれて、それでも尚最下位争いをしている彰那。
大小関わらずテストの度に目を光らせる彰那の恋人──神宮春親と咲都の苦労を晶も知っているだけに、その苦労を仇で返す様な彰那を放っておく事は出来ない。
最悪、自分と咲都の幸せな一時までも奪われてしまうのだから。